ひよこのどりっプちゃん キャンプへゴーゴー!のまき ☆プロローグ★やっほー!ぼく、どりっプです。『ひよこのどりっプちゃん』も、2巻となりました。今回も、ぼくたちをどうぞ応援してくださいね。 話はかわりますけど、よくみなさんから、「どりっプちゃんたちはどこに住んでるの?」「どりっプちゃんたちの年をおしえて。」という質問をいただきます。 いっておいた方がいいですよね・・・、ええと、ぼくたちは、『緑ヶ丘』という所の、『おとぎ町』に住んでいます。それと、ぼくはただいま5才。3月15日うまれです。そこんとこ、よろしく。 「ちょっとどりっプ!はやくあたしのことを紹介してよ!もう行ってるからね!」うう、わかったよ・・・、あ、どーもすいませんでした。 今の(キツイ)声は、いちおうぼくのおさななじみの、ちるっぷちゃんです。やおやさんにおつかいに行く時に出会った・・・という、超むなしい出会いなんですけどね。(1巻参照)彼女も、ぼくと同じ5才。でも、生まれは3月2日で、ぼくよりも13日年が上なんです。あと、ちるっぷちゃんには、妹がなんと50羽います!『あちあ』『いちあ』『うちあ』と、あいうえお順で『んちあ』までいます。うち出てきますから、この子たちのこともよろしく。・・・ここでしかいえませんけど、ちるっぷちゃんは、・・・好奇心おうせいの、どんかんで、でしゃばりな、イヤなコです・・・。「ばきっ!」 ・・・あいったー・・・ち、ちるっぷちゃん、むこういってるはずじゃなかったの・・・?なにもぶたなくても・・・「あんたのこと、あんたのおっかさんがよんでたよ!わざわざしらせに来てやったのに・・・」わ、わかったよ・・・と、とにかく、楽しさいっぱいの第2巻。新キャラも出てくるよ!それでは、はじまりはじまり〜! 「チュンチュン、おはよう!」「ピイピイ、おはようございます!」鳥たちがあいさつをしています。今、6時になったところです。 ここは、空地です。最近ここでは、毎度おなじみどりっプちゃんが、毎日ラジオ体そうをやっています。今朝もほら、かれがやってきました。 「さぁてと、やるぞっ!いち、に、さんはいっ、うぅんしょっ、こらしょっ、おぅくちぃをのばしてぇっ!1、2、3、4、しぃっぽをふぅりふりっ!ちゃんちゃーん!おつかれさまでしたーっ!」いっしょうけんめいやって、あせだくになっています。時、 「あっおーいっ、どりっプー」と、聞きおぼえのある声がうしろの方から聞こえてきました。見ると、ちるっぷちゃんがこっちへ走ってきます。どりっプちゃんは、(うわ!ちるっぷちゃんて、いがいと足はやいんだなー!あんなのにケンカうられたら、ぼく、カンペキに立場ないや・・・)とびっくりしました。ちるっぷちゃんはこっちにくると、 「ずいぶんさがしたわよ。あのさあ、」と言ってハアハアして、「うちのおふくろとおやじと、妹のあちあたちとあたしでキャンプに行くんだけど、あんたもいかない?」と、いっきにしゃべりました。「きゃんぷ?」どりっプちゃんは、くび(ただしあるのかわからない)をかしげました。「やっだーあんた、キャンプも知らないの?」 ちるっぷちゃんは、わざとらしそうに、大声で言いました。「あのねえ、キャンプってのはねえ、・・・ええと、つまりなんだ、川や山や海に行ってー・・・あれ、キャンプは海にいくか・・・?え、でもー・・・」しかし、しまいにはぶつぶつ考えこんでしまいました。どりっプちゃんが、 「ふーん、なんだかよくわからないけど・・・たのしそうだね。お母さんにきいてきて、いいっていわれたらいきたいな。」と言った時は、彼女は内心、ホっとしていました。 「オッケー、じゃあ、10時くらいになったら電話すっから、いけるってことになったら、明日の朝、うちの車でむかえにいくから。」「うんわかった、バイバイ。」「わすれんなよっ!」ということで、(ちるっぷちゃんちの車、どんなのなんだろ。ハデだから、ベンツなんかもってたりして。)なんて思いながら、どりっプちゃんは急いで家にかえりました。 「ただいまー。」どりっプちゃんが家のドアをあけると、「おかえりなさい。今、朝ごはんできるから。」と、台所からお母さんの声がしました。「あのねお母さん、友だちのちるっぷちゃんっていう子が、明日キャンプにいこうってさそってくれたんだけど・・・いってもいい?」どりっプちゃんが言うと、お母さんは、 「あら、キャンプ?すてきじゃないの。いいわねえ。いまんとこ、よていもないし、いってきなさいよ。」と、にっこりほほえんでくれました。10時になりました。そろそろくるだろうと思って、どりっプちゃんは、電話の前でまっていました。すると、「プルルルルル・・・」電話がなりました。「ちるっぷちゃんかなあ。はーい。」 「あ、どりっプ?あたしだけど。」「ちるっぷちゃん。」「どお?だいじょうぶだった?」「うん。だいじょうぶ。いけるって。」「あ、そう。1ぱく2日だからね。ああ、あと、キャンプってのは、山とか川に出かけて、外でごはん食べて、テントはってそこでねとまりすることよ。」(彼女はそれを、両親に聞いたことを言いませんでした)「へーえ。あ、じゃあ明日、よろしく。」「オッケーんじゃバイバイ」ガチャ。電話がきれました。「さてと、用意しなきゃ。」 どりっプちゃんは、自分のへやのタンスから水色のリュックサックを出してきて、中に『コアラのマーチ』のチョコレートを1はこ入れました。あと、カーレンジャーのおもちゃを2つ入れました。1つは自分のためのもので、もう1つはちるっぷちゃんにかしてあげるためです。 それからめんこをたくさん、さいごに絵本を6さつ入れました。リュックはけっこう小さかったので、もうパンパンでした。「さあっ、これでよし。明日が楽しみだな。どうか晴れますように!」 そしてつぎの日です!空はからっと晴れています。「やっほー!すごいぞ!ぼくのねがいがつうじたんだ!」どりっプちゃんは、大よろこびです。急いで朝ごはんを食べると、「ピンポーン」げんかんのチャイムが鳴りました。 (ちるっぷちゃんだ!)どりっプちゃんはまっさきにそう思って、「はーい!」と、すごいスピードでげんかんに走っていきました。ドアをあけると、ちるっぷちゃんが、けいこうピンクのリュックサックをせおって立っていました。 「おはよ!じゅんびはいいっ!?」「お、おはよう、ちょっとまって、リュックサックせおうから・・・よいしょっと・・・!うん、じゅんびおっけー!」びしっとけいれいしました。 「おしっ!いこう!」「うん、お母さーん!いってきまーす!」すると、「いってらっしゃーい。気をつけてねー」お母さんの声が家の中からしました。「さあーてと!おやじー、おふくろー!」ちるっぷちゃんがさけびました。すると、 ドドドド・・・という音がし、ふしぎに思ってどりっプちゃんがあたりをみまわすと、うしろの方から2羽の男女にわとりが走ってくるではありませんか!!「hgy@!?」するとオス方のにわとりがどりっプちゃんの方を向いて、(これがまた、にらんでるように見えてこわいんです) 「やあ!きみが、ちるっぷがいってた『どりっぶちゃん』だな!」ガッハッハとおなかをかかえてわらいました。どりっプちゃんは、「あ・・・あのう、ぼく、『どりっぶ』じゃなくて『どりっプ』です。・・・ちるっぷちゃんのお父さんですか?」と、おそるおそる聞きました。 「パンパカパーン!とおり!いかにもわしは、ちるっぷの父・タマタマだ!!こっちにいるのは、妻のタミタミだ!!」メスのにわとりを指さしました。「よろしく!!」2羽そろってさけびました。「は、はあ・・・2日間、よろしくおねがいします・・・」どりっプちゃんは、(なんか、ちるっぷちゃんとすごいにてるなあ・・・)と思いました。 「あれ、おやじ、車わすれてきてるんじゃない?」ちるっぷちゃんが言いました。「ああ、空き地のそばにとめたんだった。もってくるから、ちとまっていてくれ。」ちるっぷちゃんのお父さんは、走っていってしまいました。 「ねえどりっプ、リュックの中、なに入ってる?」ちるっぷちゃんにいきなり聞かれて、どりっプちゃんは急いで思い出しました。「え、えーと、コアラのマーチ1はこと、カーレンジャーのおにんぎょう2つと、ーあ、1つちるっぷちゃんにかしてあげるねーあとめんこと、絵本6さつ。これで全部だよ。」「ええーっ、いいないいな!あたしのよりすごくいい!あたしのなんかねー。」ちるっぷちゃんが言いかけた時、すごくボロい赤い車が、プッスンプッスン音をたててやってきました。 「あれが、うちの車だよ。」ちるっぷちゃんが言いました。「へ、へえ・・・すごいね。」どりっプちゃんがつぶやきました。赤い車には、くもが数10匹ほどぶらさがっていて、ところどころがさびて穴もあいていて、それをガムテープでかくしていました。 車はどりっプちゃんたちのいるところで、はでな音をたてて止まりました。まどが開いて、ちるっぷちゃんのお父さん顔がのぞきました。「さあーっ、のったのった。出発するぞーっ!」といわれたので、どりっプちゃんたちは、急いで車にのりこみました。「しゅっぱーつ!!プップー!」とさけぶと、オンボロ車はまたはでな音をたてて動きだしました。 さっそく子どもたち2羽は、どりっプちゃんのもってきたカーレンジャーのおもちゃで遊びはじめました。ちるっぷちゃんは、セーラームーンのにんぎょうを1つもってきていましたので、それもいれて遊びました。(彼女はそれを、戦士ちるっぷと名づけていたので、どりっプちゃんも、自分のおもちゃにどりっプレンジャーと名づけることにしました。) 「セーラーちるっぷさん、ピクニックにいきましょう。」「いいわよ、早くいきましょ。」こういうぐあいに仲良く遊んでいたのですが、「あっっ!!」と、いきなりちるっぷちゃんが大声をあげた時は、にもびっくりしたので、どりっプちゃんは、カーレンジャーのおもちゃを下におとしてしまいました。ちるっぷちゃんのお父さんはうんてんをまちがえて、まわりの家に車がぶつかり、またまた大きなキズができてしまいました。 「ど、どおしたのセーラーちるっ、いやちるっぷちゃん。ぼく、心ぞうがとまるかとおもった。」どりっプちゃんは、カーレンジャーのおもちゃをひろいながら言いました。ちるっぷちゃんは、「ーあちあたちは!!」といっきに言いました。「・・・はっ!!」つづいてみんなも大声をあげました。「し、しまった!べんじょに入ってたもんだから、すっかりわすれていた!!」とちるっぷちゃんのお父さん。どりっプちゃんとちるっぷちゃんは、顔を見合わせました。時どりっプちゃんが、「・・・あれ、なんだいるじゃない。」とつぶやきました。「へ?どこどこ?」ちるっぷちゃんたちは、あたりをキョロキョロ見回しました。 「ほら、下、下。」どりっプちゃんの指先をみると、正銘(?)ちるっぷちゃんの50羽妹、あちあたちがいるではありませんか!!「あーっ!あんたたち、どーやって入りこんでたの!!」ちるっぷちゃんが、めをまるくしました。「そこにいたのか!!」さすがのちるっぷちゃんのお父さん、お母さんも、口をあんぐりさせています。 「おまえたち・・・!おお、よかった、よかった!さすがわしのむすめたちだ!!」ちるっぷちゃんのお父さんはそう言って、あちあをだきあげました。どりっプちゃんとちるっぷちゃんも、いちあとうちあをだきあげました。ちるっぷちゃんのお母さんも「にんじゃみたい!」と言って、えちあをだきあげました。 「まあとにかく、もう一度キャンプ場にレッツゴー!!」ちるっぷちゃんのお父さんが、あちあたちをおいて、笑顔でエンジンをかけなおしました。わらいにつつまれて、キャンプ場に向かって車は走りつづけました。 さて、2時間ちかくたちましたでしょうか。どりっプちゃんたちののったオンボロ車は、まだ走りつづけています。子どもたちは、さぞつかれたのでしょう。すやすやとねむっています。「お、見えてきたぞ。おーい、見てみろ。もうすぐつくぞー。」ちるっぷちゃんのお父さんが言いました。どりっプちゃんたちは目がさめましたが、まだとしています。しかしそれも、まどの外をみると、たちまちふっとんでいってしまいました。 「わあーっ!!きれいー」まわりには、緑の林、おくにはすきとおった川が流れています。魚がおよいでいて、ところどころに橋がかけてありました。子どもたちが、魚をつったりして遊んでいます。ほかの動物もたくさんいます。大人は、テントをはったりしていました。「ずいぶんこんでるねー。うちらのテントはる場所あるかなー。」 ちるっぷちゃんがうきうきしながら言いおわった時、どりっプちゃんたちののっているオンボロ車は、キャンプ場の中に入って行きました。どりっプちゃんは、キャンプというのをするのははじめてでしたので、とてもワクワクしていました。すると、ちるっぷちゃんのお母さんが、小さなお店のようなとこに入っていきました。 ーこれは、あとでちるっぷちゃんが、じむしょといって、中にいるのはかんり人だと言っていましたー(彼女は、ただひまだったので言っただけだったのですが、どりっプちゃんには、とても勉強になりました)10分ぐらいたつと、ちるっぷちゃんのお母さんとうさぎのかんり人さんが出てきました。そして、何かしゃべりながらおくの方へいってしまいました。 「よし、あとをつけるぞ。」ちるっぷちゃんのお父さんは、スパイみたいないい方をすると、エンジンをかけなおして、ゆっくりとちるっぷちゃんのお母さんたちのあとをついていきました。どりっプちゃんは、なんだかおもしろくなりました。 「さあ、ここです。どうぞ、ごゆっくり。」かんり人さんがたちどまったところは、さっきどりっプちゃんたちがまどから外をみた時のちょうど場所でした。どりっプちゃんとちるっぷちゃんは、がまんができなくなり、車の中からとび出してきてしまいました。「わあ、いいとこー」「ホント、さいこー」2羽がとびはねていると、 「ほう、なかなかいいところじゃないか。」ちるっぷちゃんのお父さんも車から出てきました。「おしっ、じゃあ、さっそくテントをはろう!」「オー!」まず、ほねを組み立てます。これは、みんなで協力したので5分くらいでできました。つぎに、ほねに黄色ぬのをはりました。これはけっこうたいへんで、15分ぐらいかかりました。 さいごに、ロープをつけたくいを地面にさしこみます。ちょうど、くいは6本ありましたので、みんなで手分けしてやりました。あと、テーブルといすを組みたてましたが、こうしてやっとテントの組み立てがおわりました。「ふうーっ!つかれたーっ。」「ホント、ホント。でもまあ、なかなかかっこいいんじゃない。」「そうだ。ねえっ、おふくろ、おやじ。川であそんできていい?」ちるっぷちゃんが聞きました。「いいけど、おぼれないようにきをつけなさいよ。かんり人さんが言ってたけど、あの川、けっこう深いそうよ。」 「わかったわかった。さあいこう、どりっプ!」「え・・・う、うん。」どりっプちゃんは、『けっこう深いそう』というとこで少しとまどいましたが、きをつければ大丈夫かなと思って、ちるっぷちゃんと川に出かけました。見れば見るほど、きれいな川でした。「わあー、魚がいっぱいいるねえ。」 「ねえどりっプ、こういうのはどう?つかまえてはにがして、つかまえてはにがしてって。おもしろそうじゃない。」ちるっぷちゃんが提案しました。「あ、おもしろそう。やろやろー」・・・ということで2羽は、「わーい!お魚さん、まって〜!」「見て見て〜1匹つかまえた〜」そんなことを言って、わいわい遊び始めました。 しかし、何分かたった時、「わっ!」「あっ!」どりっプちゃんとちるっぷちゃんは、2羽どうじにつるっとすべって転んでしまいました。 ・・・パチパチパチ・・・今、どりっプちゃんとちるっぷちゃんは、バスタオルを体にまきつけて、たき火にあたってブルブルふるえているところです。「ハックション!」どりっプちゃんが、13回目のくしゃみをしました。ちるっぷちゃんも、もう13回くしゃみをしました。「まったく、あれほど言ったのに!」ちるっぷちゃんのお母さんが、プリプリおこりながらタオルをもってきます。「なあおまえ、昼ごはんは?はらへったよ。」ちるっぷちゃんのお父さんおなかは、たとえどんなことがあってもすきつづけるようです。 「そういえば、もう1時ね。お昼ごはん、何にしようかしら。カップラーメンでいい?」「何でもいいよ。早くしてくれ。」「ぼく、あったかいものなら何でもいいデス。ヘックション!」「クション。あたしも。」どりっプちゃんとちるっぷちゃんも、うなずきました。 「なら、今おゆわかすから、そこにあるビニールぶくろからすきなのえらんであけてて。」ちるっぷちゃんのお母さんが、テーブルの上にある小さなビニールぶくろをゆびさしました。すると、「・・・ねえ、あちあたちのは?」ちるっぷちゃんが、まゆをしかめました。どりっプちゃんは、(あれ、ちるっぷちゃんって、いがいと妹おもいなのかも・・・)とびっくりしました。「だいじょうぶ。しんぱいしなくていいわよ。」ちるっぷちゃんのお母さんは、にっこりわらいました。「?」と思いましたが、 「ほら、おまえたちこっちにおいで。いろんなのがあるぞ。」ちるっぷちゃんのお父さんが、どりっプちゃんたちにてまねきしたので、「はーい。」と関心はそっちにいってしまいました。「ど、どれにしようかな・・・クシャン!」「あたし、『いっぺいちゃん』にしようっと。」「じゃあ、ぼく、『海のシーフード』がいいや。ーヘクシュ!」「わしはとんこつ味のやつだ!」「おふくろは、みそあじよ!」3羽がきめた時、「シュ〜!」おゆがわきました。 ちるっぷちゃんのお母さんが、おゆの入ったやかんをもってこっちに来ました。カップラーメンのふたをあけて、スープを入れて、おゆをかけました。そして、ふたをしめながら「ここにおもしをもせて3分間まっているのよ。」と言いました。「ぼくの絵本でもいいい?」どりっプちゃんは、自分の本をそれぞれのカップラーメン上にのせました。 「おいおまえ、ほんとにあちあたちはどうなるんだ。」ちるっぷちゃんのお父さんがたずねると、「ああ、それはちるっぷがわけるのよ。」彼女は、へいぜんとして言いました。 「ええーっ!!なんでよ!あちあたちに『いっぺいちゃん』なんて、にあわないわよ!どーせならみそにしたほうがいいわよ!みそ!」そうさけんだのは、ちるっぷちゃんでした。どりっプちゃんは、(・・・ケチだなー・・・)と思いました。しかし、ちるっぷちゃんのお母さんもまけてはいません。 「あらあ、あちあたちはねえ、『いっぺいちゃん』が好きなのよ!ねえ、あちあちゃんたち、そうよねえ〜。」50羽のちるっぷちゃんの妹たちが、いっせいにコクリとうなずきます。ちるっぷちゃんはグッとなりましたが、「で、でも、おなじのばっかり食べてると、がんになっちゃうのよ!しらないの!?やっぱりみそ味にした方がいーわよ!みそ!」どうだといわんばかりに、むねをはりました。・・・というふうに、ちるっぷちゃんと、お母さんがギャーギャー言い合ってるのをどりっプちゃんとちるっぷちゃんのお父さんがどう見ていたかといいますと、ただ口をぽか〜んと開けて、2羽をじゅんばんにみくらべていたのでした。 「・・・おれたち男だよな・・・」「・・・たぶん・・・」「・・・女ってこわいよな・・・」「・・・うん・・・」時、ちるっぷちゃんのお父さんがハッとわれにかえりました。「お、おいおまえたち・・・もう、5分もたっちゃったぞ。ラーメンのびちゃったぞ。ほらほら、けんかなんてつまんないからやめて、はやくたべようぜ。」どりっプちゃんも、 「そ、そうだよ。あちあちゃんたちには、ぼくのラーメンをわけるからさ。ちるっぷちゃん、毛、かわいた?ぼく、もうかわいちゃった。」話題をかえようとしました。ちるっぷちゃんたちがしぶしぶつくえにすわると、どりっプちゃんはちるっぷちゃんのお母さんに紙皿をもらって、あちあたちに自分のカップラーメンをわけてあげました。そして、みんなでわいわいやりながら昼ごはんにしました。 「あ、そういえば、もう夕方だ、気がつかなかったな。」どりっプちゃんが、まっかな夕焼を見上げました。「なにしよ・・・ねーちるっぷちゃーん、何かしようよぉ!せっかくのキャンプなのに、つまらなかった・・・なんて、ちるっぷちゃんもヤでしょ?」(口ベタのどりっプちゃんにしては、すばらしくうまく言えました。) そう彼がさけぶと、ちるっぷちゃんが、おどろくほどすばやくバッとテントの中からとびだしました。「それをいうのをまっていたわ!よしゃ!どりっプ、水でっぽう買いにいこ!」「み・・・みずでっぽー?」「いけばわかるって!おふくろー、水でっぽう買いにいきたいんだけど・・・」(にも早すぎるたちなおりだったので、どりっプちゃんはあきれてしまいました。)こうしてどりっプちゃんとちるっぷちゃんは300円ずつお金をもらうと、じむしょへと足を走らせました。 じむしょには、水でっぽうが5こ、ビーチボールが4こ、アイスクリームがたくさん箱に入っていました。(水でっぽうは、ちょうど300円でした。)ちるっぷちゃんはとっさに、「あたしこれにきめたーっ。」とすきとおったピンクの水でっぽうをギュッとにぎりしめ、どりっプちゃんも「ぼくはこれにしよーっと。」と、すきとおった水色のをとりました。 「ちょっとそれかして。」ちるっぷちゃんはどりっプちゃんのもっているお金と水でっぽうをとると、「おじちゃーん、これちょうだい。」自分のといっしょに、そこにすわっていた犬のおじさんにわたしました。「はいよ、まいどありーっ!」おじさんは、水でっぽうをビニールぶくろに入れてさしだしてくれました。 「やっつぁーしゃーどりっプ、きゃわにいくじょー!」ちるっぷちゃんは、よほどうれしかったようです。どりっプちゃんは、おもわずふきだしてしまいました。(あとで彼女にぶたれましたけど。)そこで2羽は、さっそく川にやってきました。水でっぽうに川水をいれて、2羽はそこらへんにかけてしばらく遊んでいました。 すると、とつぜん、ちるっぷちゃんがどりっプちゃんのわき下に「ぷじょー!!」と水をはっしゃしたのです!!「アウチ!!」どりっプちゃんは、わきをおさえてたおれこみました。「な、なにするのさちるっぷちゃん・・・毛がぬれちゃったぢゃないか・・・」すごくしびれた顔をしています。「あっはっはーっごめんごめんっ、ちょっと、手がすべっちゃってー」「・・・うそつき・・・」「なんか言った?」「・・・べつに・・・」「ふん。ま、いいや、じゃーどりっプ、次は川入ろー。」「えーっ、川に入るのーっ!?」 どりっプちゃんは、おもいっきりいやそうな顔をしました。しかし、ちるっぷちゃんには通じていません。「ちがうわよ、ちょっとわたるだけよ。ほら、あの川向こうほら穴、なんかすごいブキミじゃん。あれぜったい、やまんばが住んでんだよ。」「・・・やまんばなんているわけないじゃん・・・そ、それに、もう夕方だし、川水きっとつめたいよぉ。」 「なんでぃ、グズグズ言って。男らしくないなあ。それともあんた、女なの?・・・あーっわかった、どりっプ、こわいんでしょ!そーだそーだ、こわいんだー」どりっプちゃんは、まっかになってしまいました。どうやら、図星のようです。「ち、ちがうよッ!わかった、いけ、いけばいいんでしょ!」「おっ、さーすが!さ、いこーレッツゴー!」 ちるっぷちゃんは、ずんずん川中に入っていきました。(ふんだ、ふんだ、そっちこそ女の子らしくないくせに。いきたいんならひとりでいけばいいじゃないかあ。それにさ、ブツブツ・・・)「どりっプー、はやくー。」「う、うん。・・・ねー、流れはやいよー・・・。」「なーに言ってんの!ほらはやく!」「うん・・・。」 しかたなく、おそるおそるちるっぷちゃんのいるところまで行きました。「よし、いっしょにいくぞ。」どりっプちゃんとちるっぷちゃんは、1歩、2歩と足をふみだしていきました。 川はけっこう深くて、2羽のこしぐらいまでありました。(どりっプちゃんは、つめたくてもうガチガチでした。)しかしかわいそうに、このひよこたちに、運をあたえてくれなかったようです。2羽は同時に「ずるっ!!」とすべってしまったのです!「わあぁぁぁ!!」どりっプちゃんとちるっぷちゃんは、ながされていってしまいました!! 夜になりました。あのあと、どりっプちゃんとちるっぷちゃんは、サムエルくん、チャムエルちゃんにたすけられたのだとサムエル君たちの親(前回のみしらぬ大人たち)ききました。 何度もおれいをいったのですが、もう、子どもたちは、すっかり仲良くなっていました!(もっとも、人見知りしない大人たちは、もうとっくのとうに仲良くなっていました。) サムエルくんたちの家テントがある場所は広かったので、ちるっぷちゃんたちのテントもそこに場所をうつしました。 今は夕食を食べおわり、(カレーライスでしたので、ちるっぷちゃんは上きげんでした。)子どもたちはちるっぷちゃんの家テントに、大人たちとあちあたちはサムエルくんたちの家テントで寝ることになっていたので、どりっプちゃんたちはちるっぷちゃんの家テントでババヌキをして遊んでいました。 「はい、次どりっプの番よ。」「う、うん・・・よし、これだっ!」「あーっ、どりっプ、ババひいたー!ババだババだー!」「あーっ、しまったー!」「はい、あがり!どりっプの負けー!よしゃ、次なにやるー?」「ち、ちるっぷちゃん・・・もうちょっと、静かにできない・・・?」 たしかに、サムエル君のいうことも一理あります。只今の時刻は午後9時15分。他のキャンプ場にきているお客さんたちは、寝静まっているとこも多いようです。「なんだかぼく、眠くなってきちゃった・・・。」どりっプちゃんが、目をこすりながら言いました。いつも8時半にはふとんに入る彼には、少しこの時間はもたないようです。 サムエル君、チャムエルちゃんもねむたそうです。ただ、ちるっぷちゃんはいつも10時半にねているので、ねむたがるどりっプちゃんたちの気持ちがわかりませんでした。「ねえ、そろそろねない・・・ブハッ!」どりっプちゃんが大あくびをしながら言いかけた時、口中にまくらがとんできました。 「ひるっぷひゃんだな〜、モガモガ、は、はれはあ、ほっへ〜・・・」(おまけに、このあわれな主人公、手が短いからまくらを自分でとれません。)サムエルくんとチャムエルちゃんがやっとこさとったもの、どりっプちゃんはもう涙目です。 「ちるっぷちゃん〜、今回ばかりはぼく、おこったぞ〜。とりゃっ!」ねむいのも忘れて、さっきのまくらをちるっぷちゃんにぶんなげました。しかし彼女は、「ナイスキャッチ!」と自分で言ってまくらを両手でとると、「ほら、サムエルっ!」と、べつのまくらもひとつあわせてサムエル君に投げました。 こうして4羽はまくら投げを始めました。そしてそれはとても楽しく、それぞれの夢にまででてきました。ただ、どりっプちゃんだけは、口がまくらでふさがって、なかなかとれなくてあごがはずれた、というでしたけどね。 大人たちのひょうしぬけた声が横からしました。「なーに、お父さん、お母さん。」サムエル君とチャムエルちゃんが聞きました。「そこらへんの山で、茸を採ってきてくれない?」「ええ〜っ、きのこぉ!?」4羽のひよこたちは、いやそうに顔をみあわせました。「お昼のバーベキューに使いたいの。もう、他具はそろってるんだけど」「わお!バーベキュー!」ちるっぷちゃんが、したなめずりをしました。「それに、このあたり山は、まつたけがあるって有名なのよ。」「まつたけ!」またもや、食欲ナンバーワンの彼女が、目をかがやかせました。「行ってくれる?」「えぇ〜・・・」どりっプちゃん、サムエル君、チャムエルちゃんはいやがりましたが、ちるっぷちゃんは、「いってあげてもいいわよ!」と、目をキラキラさせてさけびました。「本当!?じゃ、今10時だから、1時ぐらいまでには帰ってくるのよ!」ちるっぷちゃんのお母さんはそれだけ言うと、むこうをむいて、ガヤガヤやり始めました。「さあ、いくわよ!じゅんびして、みんな!」「ハア・・・。」どりっプちゃんたちは、ガクッとうなだれました。 「ち、ちるっぷちゃ〜ん・・・あとどれぐらい歩くの〜・・・?」どりっプちゃんが、ゼエゼエいいながら聞きました。ちるっぷちゃんは、お母さんからもらった地図をひろげながら頭をひねりました。「ん〜?たぶん、あと30分ぐらいだと思うけど・・・。」「さ、30分!!」「そんな〜・・・」サムエル君、チャムエルちゃんも、だいぶつかれたようです。 あれから1時間。ちるっぷちゃんの好奇心、そして強引さにはやれやれとは思いつつ、子どもたちは、黄金のまつたけを見つけるため、てくてくと山をのぼってきました。 しかし、どんなにがんばっても、小さなきのこ1つさえみつけられません。「それにどうせなら、頭のいいサムエル君とかチャムエルちゃんに地図をまかせればいいのに・・・。」 どりっプちゃんがぼそっとつぶやくと、ちるっぷちゃんが「何?それは、あたしに対するブジョクかな?」と、ギロっとにらみました。「け、けっしてそんなことは・・・。」 時、どりっプちゃんの前に、なにかが見えました。「?・・・あ、あれ、あれきのこじゃない!?」「ほんとだ、きのこだ!いっぱいあるーっ」「なんで気付かなかったんだろー」 ちるっぷちゃんとサムエル君も、2しゅるいくらいあるたくさんのきのこめがけてかけだしました。1つはまだらのもようがついていて、もう1つはもようはなく、全部うすい茶色でした。「さ〜、どっちからとろうかな よしきめた、まだらの方からとろうっと!」ちるっぷちゃんがさっそく手をだすと・・・「ちるっぷちゃん、とらない方がいいわ。きのこは・・・どくきのこよ!」チャムエルちゃんがさけびました。3羽は、いっしゅんぽかぁ〜んとしました。 「・・・え、どくきのこ!?」「うそでしょ〜?」しんじられない、というかんじです。「ちょっとまって、今調べるからー・・・」サムエル君が、きのこしゅるいがでている本(大人たちにかしてもらった)ページをめくりました。「え〜っと・・・あっ、あった!やっぱりこのまだらのやつ、どくきのこだ。」「なんだぁ、せっかく見つけたのにぃ。」「チャムエルちゃん、すごーい。」 みんな、ヘナヘナとすわりこんでしまいました。なにしろ、1時間もかけてここまできたのに、やっと見つかったきのこがどくきのこだったんですから。「もしかして、まつたけがあるなんてうそじゃないのかなぁ。」「え?まつたけ?まつたけといえば・・・ねえお兄ちゃん、この大きいうす茶色方きのこは?どくきのこではないと思うんだけど。」 チャムエルちゃんに言われて、サムエル君はふたたび本のページをめくりました。「・・・あ、あっ・・・た・・・チャ、チャムエル・・・すごいぞ!」わなわなとふるえているので、3羽もふしぎそうに本をのぞきこむと・・・!なんとそこには、『まつたけ』と書いてある、そこにある、うす茶色きのこと同じものがのっていたのです! どりっプちゃんたちは、今度は4羽そろってしばらくぽかぁ〜んとしていました。「す・・・すすすすご〜い!さっそくとるわよ!」やっとちるっぷちゃんのかけ声で、ひよこたちはむがむちゅうで『まつたけ』をとり始めました。おなかがグウグウなっているのも忘れて・・・とにかく、日のお昼ごはんが最においしかったことは、いうまでもありません。 「そうらしいんだ。少し目をはなしていたらいなくなっていて、こんな手紙が・・・」ちるっぷちゃんのお父さんは、1枚の紙をとりだしました。「えーっとなになに?きさまの・・・たちは・・・かった・・・してほしければ、・・・の・・・を・・・して、・・・の・・・にィ!?なにこれ、号!?ぜんっぜん意味わからん!」 「ちるっぷちゃん、漢字が入ってるんだよ。・・・『きさまの娘たちは預かった。返してほしければ、身代金100万円を用意して、キャンプ場の横公園に来い。』・・・」 なんだか、大変なことになってしまったようです。だれかが、ちるっぷちゃんの妹たち、あちあ〜んちあを誘拐したのです!「へ〜え、サムエル、よくこんなへたっぴな字、よめたねえ。しっかし、よくこんな家にこんなこと要求してくるわねえ。」「ちるっぷっ!な家とはなんだ、とは!おまえが言うしかくはなあ、」「と、とにかく、どうするんですか!?」 (この時どりっプちゃんは、(サムエル君、いいタイミング!)と思いました。)「ああ、金はもたないで、公園に行く。」これにはみんな、とてもおどろきました。なにしろこのお父さん、そんな勇気のある人だとは、だれ一人思ってませんでしたから。「犯人は、銃をもっているかもしれませんよ!?」「大丈夫だ、こっちも銃はもっている。」「・・・は!?」 「子どもたちは危険だ、まっていて警察に電話してくれ。大人のみなさん、行きますぞ!」それだけ言い返すと、大人たちは、走っていってしまいました。4羽のひよこたちは、しばらくしらけていました。「・・・なんでちるっぷちゃんのお父さん、銃をもってるのかなぁ。」・・・ここで少しだけ「シィ〜ン。」「番号、なんだっけ。」「なにが。」「だから、警察の電話番号。」「110番でしょ。」「番号といえば、ぼくたちの住所はどうなったんだろ。」・・・またまた「シィ〜ン。」 「おやじたちが帰ってきてから、も一度聞けばいいんじゃない。」「・・・帰ってこなかったりして。」・・・もっともっと「シィ〜ン。」子どもたちは、もうこれ以上この話をするのはよそう、ということで、話のうまいチャムエルちゃんが警察に電話することになりました。「はい、警察です。」「あの、大変なんです。実は・・・」 うまくこれまでのこと、ここの場所を話すと、「・・・わかりました、すぐ行きます。」と言って電話は切れました。「すぐ来てくれるって。」「よっしゃ、それじゃあ、行きますかね。」「え、どこに?」「もちろん、おやじたちがいる、公園によ!」